川越の暮らしと記憶に寄り添う、丸広百貨店

丸広百貨店
丸広百貨店

川越の街を歩くと、観光地としての顔だけでなく、地元の人たちの日常が見えてくる場所があります。そのひとつが「丸広百貨店」です。

丸広百貨店は、埼玉県を中心に展開する地域密着型の百貨店です。なかでも川越店は、川越の中心市街地にあり、長く地元の人たちに親しまれてきました。川越と聞くと、蔵造りの町並みや菓子屋横丁を思い浮かべる人も多いかもしれません。しかし丸広百貨店は、観光地としての川越ではなく、生活の場としての川越を感じられる場所です。

地下の食品売り場、衣料品、生活雑貨、ギフト、レストランなど、百貨店らしい機能を持ちながら、どこか気取らない雰囲気があります。特別な日の買い物にも、日常のちょっとした用事にも使える。そんな距離感の近さが、丸広百貨店らしさだといえるでしょう。

この場所を語るうえで欠かせないのが、かつて屋上にあった遊園地「わんぱくランド」の存在です。

丸広百貨店川越店の屋上には、小さな観覧車や遊具が並ぶ遊園地がありました。百貨店の屋上に遊園地がある。今ではあまり見かけなくなったその光景は、昭和から平成にかけて、多くの人の記憶に残っています。

買い物のついでに屋上へ行き、遊具に乗り、家族で食事をして帰る。子どもにとっては特別な遊び場であり、大人にとっては家族との時間が積み重なる場所。丸広百貨店は、単に商品を買う場所ではなく、思い出が生まれる場所でもありました。

わんぱくランドは2019年に閉園しました。けれど、その場所から記憶が消えてしまったわけではありません。

現在、わんぱくランドの跡地は、屋上でゆっくり過ごせる広場として生まれ変わっています。人工芝が広がる空間や、腰を下ろして休める場所があり、買い物の途中にひと息つける憩いのスペースになっています。

そして、その屋上には「民部稲荷神社」があります。

かつて観覧車や遊具があった場所に、今は静かに神社が佇んでいる。その光景には、丸広百貨店という場所の変化がよく表れています。にぎやかな屋上遊園地として親しまれた時代から、地域の人が穏やかに過ごせる場所へ。形は変わっても、屋上が人を迎える場所であり続けていることに変わりはありません。

丸広百貨店

この写真を見ると、丸広百貨店がただ昔の姿を残しているだけではないことが伝わってきます。懐かしさを抱えながらも、今の時代に合う形で地域に開かれている。そこに、この百貨店の魅力があります。

大型商業施設やネット通販が当たり前になった今、百貨店の役割は以前とは変わりました。それでも丸広百貨店には、地域の人が自然に足を運ぶ理由があります。贈り物を選ぶとき、家族で食事をするとき、少し良いものを買いたいとき。そこに「まるひろ」があること自体が、川越の日常の一部になっています。

丸広百貨店は、ただ古くからある百貨店ではありません。川越の暮らしを支え、家族の思い出を受け止め、時代に合わせて変わり続けてきた地域の象徴です。

観光地としての川越を歩くだけでは見えにくい、地元の人たちの生活と記憶。丸広百貨店には、その両方が静かに残っています。